無人決済店舗拡大のキーマンに迫る

前編では無人決済店舗の特徴や、将来性、可能性についてお伝えしましたが、後編では実際に店舗開発を担ってきた「TTG推進グループ」の江川賢さんと津田純一さんのインタビューをお届けします。

まさにファミリーマート発展のキーマンとも言えるお二人は、無人決済店舗にどのような可能性を感じているのでしょうか。

重視したのはスピード感

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——1号店「ファミマ!!サピアタワー/S店」がオープンして1年以上が経過しましたが、周囲からの反応はいかがでしょうか。

津田さん:ありがたいことに多くのメディアに取り上げていただいたことで、多くの出店依頼が寄せられている状態です。202210月現在で出店している6店舗はすべて首都圏にあるのですが、ご相談は全国各地からいただいているので、これからどんどん拡大していくための計画を練っていますよ。

江川さん:無人決済店舗の開発はこれまでの店舗開発とまったく異なる事業計画なので、まだ発展途上でもあります。しかし店舗数が増えると得られるノウハウも多くなりますので、今後ますます柔軟に対応できるようにしていきたいと思っています。

——お二人が所属する「TTG推進グループ」の「TTG」とは何なのでしょうか。

江川さん:ファミリーマートが採用している無人決済システムを開発した、株式会社TOUCH TO GO(以下、TTGのことです。無人決済システムは多くの企業が開発を進めているのですが、私たちはいかにスピーディーに実用化できるかということを最も重視しました。その観点から選定した結果、我々のビジョンに合致したのがTTGのシステムだったんです。

津田さん:他社も無人決済店舗に挑戦していますが、今のところ複数店舗を運営できているのはファミリーマートだけです。このスピード感も、TTGとの二人三脚だからこそ実現できたものだと思っています。

お客さまにとってのNo.1への道のりは?

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——無人決済店舗をはじめ、これまでと異なるかたちでの店舗開発は、ファミリーマートがお客さまにとってのNo.1になるための大きな布石です。どのような道筋でNo.1を目指していこうとお考えですか。

江川さん:そう言われるとプレッシャーがのしかかってきますよね(笑)。もちろんNo.1を目指すのも大切なミッションですが、私たちは何よりお客さま加盟店の役に立つことを重視しています。その結果としてファミリーマートを選んでいただき、No.1になれたらと考えています。

津田さん:先ほども申し上げたように、全国からお問い合わせをたくさんいただいていますし、無人決済店舗を複数店舗運営できているのもファミリーマートだけです。

今はまだ首都圏に6店舗だけなので、無人決済店舗の利便性を訴求しきれていない部分もあります。もっと規模が大きくなれば、お客さまもニーズに合わせて、通常の店舗と無人決済店舗を使い分けていただけるようになるんじゃないかと期待しています。

「こんなところにファミリーマート!」を推進

——新しい価値観での店舗開発には、どのような苦労があるのでしょうか。

津田さん:社内でも社外でも調整する要素が多いことですね。ファミリーマートは40年以上の歴史の中で、店舗開発のフォーマットができていたのですが、今の部署ではいかにフォーマットから外れた出店方法でも利益をあげられるのかを考えて実践していかないといけません。既存の方法は通用しない条件でも店舗を運営していかないといけないですから、とにかく大変です。

江川さん:利用者の方には「こんなところにもファミリーマートがあって嬉しい!」と便利に思っていただけるとありがたいですが、それって同時に「普通こんなところにコンビニは出店しない」という定石を覆していることでもあるんですよね。この可能性の模索はチャレンジングでやりがいがあります。

「使い方がわからない」お客さまをゼロにしたい

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——津田さんがおっしゃるように、事業を拡大していくためにはまだ利用したことがない方やご存じない方へのアプローチが大切ですよね。

江川さん:先日たまたま「ファミマ!!サピアタワー/S店」に行ったとき、50代ぐらいの男性が店内にいらっしゃったんですけど、しばらく店内を歩きまわってから「使い方がわからないからいいや」って出ていってしまったんです。それはショックでしたね。私たちはシステムを知っているから便利だと感じていただけで、初めてのお客さまにとっては未知のもの。アプローチが足りていなかったんだと気付かされました。店内アナウンスや掲示など、使い方を周知する方法は模索していかないといけないですね。将来的に「使い方がわからない」というお客さまをゼロにしたいです。

津田さん:私も、まだまだお客さまへ告知する必要があると感じています。事業者への周知はできていると思いますが、実際にご利用いただくのはお客さまですので、どういうシーンで役に立つのか、どうやって商品を購入するのかを知ってもらうための情報発信に力を入れていきたいですね。

——他にはどのような課題があるのでしょうか。

江川さん:無人店舗のため、取り扱えない商材もある中で、社内でもどうにかファミチキを品揃えできないか・・・ 」と言われることもあり、店舗開発をスムーズに進められないことも多いです。ですので、他の部署とも協力しながら、取り扱えない商材がある中でも、社内的にも無人決済店舗がどれほどメリットが多いのかという説得材料を増やしている段階です。

オーナーとの関係性は変わらない

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——無人決済店舗は人件費を抑えられる一方、カメラやディスプレイの常時稼働など、従来の店舗とは異なるコストがかかってくると思います。

江川さん:それはそうですね。システムの設置にはそれなりのコストがかかります。ですが人を雇うということは、お給料だけではなく、教育コストも必要になります。そう考えると、長期的には無人決済店舗の方が効率が良いんです。

津田さん:もちろん無人決済店舗にもオーナーをはじめスタッフはいます。有人店舗を母店として、無人決済店舗を出張店舗として営業することで、これまで以上に利益を得ている加盟店もいらっしゃいます。店舗開発の方法は変わっても、店舗を通じて加盟店に利益を還元したいという思いは変わりません。

これからのコンビニ業界はどのように変わる?

——コンビニもこれからますます変革が求められそうです。

津田さん:私の入社時、選考で「10年後のファミリーマートはどうなっていると思いますか」という課題を出されました。当時どのように回答したのかは忘れてしまったのですが(笑)、今のような将来はまったく想像できなかったですね。

江川さん:私も、今後どうなるか誰かに教えてほしいぐらいです(笑)。でも確実に言えるのは、今のままの業態だと業界全体が先細りしてしまうということです。またコロナ禍でオフィスへの出社数も減ってしまったことで、新たな出店計画も、これまで出店していた店舗をどうするかも、見直しが必要になっています。だからこそ、新しい価値観での店舗開発が必要になってくるんです。

挑戦を続けるファミリーマートが求める人物とは?

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——学生の皆さんへのメッセージをお願いします。

江川さん:ファミリーマートはいつでも挑戦者の気持ちを持っているので、意欲のある方にはとても向いていると思います。私たちの部署にはまだ若手社員がいないので、新しい価値観を持っている方にはぜひ挑戦してもらいたいですね。

津田さん:自分の思いをどうやって周囲に伝えて、どう実現するのかは、社会人にとって必要なスキルだと思います。ファミリーマートは、やってみたいことはどんどんやれという社風なので、ではどういう企画書を書くのか、誰を巻き込むのか、どうやって周りを説得するのかという経験をどんどん積んでいけます。ですので、実現したいことがある方にとってはとても働きやすい職場だと思います。

<プロフィール>
江川賢
開発推進室TTG推進グループマネジャー
1999年入社。SVを約7年経験後、開発職として神奈川エリアを中心に担当し、法人開発系の業務に携わる。

津田純一
開発推進室TTG推進グループ
2005年入社。SVを約6年経験後、本社に異動。ASD(自販機型無人コンビニ)サービスの設置に携わる。