[SPECIAL INTERVIEW:代表対談] 代表取締役社長 細見 研介 / ファッションデザイナー 落合 宏理

特別対談
「チャレンジするほうの仕事」を語る
「挑戦」が生み出す、新しい文化

ファミリーマートの
「Convenience Wear(コンビニエンスウェア)」は
SNSを中心に話題を集め、
「コンビニで服を買う」という
新しい文化を生み出しました。

その挑戦を通じ、
コンビニのビジネスに秘められた
可能性について語ります。

PROFILE

株式会社ファミリーマート
代表取締役社長
細見 研介
1962年大阪府生まれ。1986年神戸大学卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。
2020年に最先端の技術を活用した精度の高いターゲティング広告を「ファミペイ」などを通じてお客さまに提供し、ファミリーマート店舗へ送客を促す広告事業会社「株式会社データ・ワン」設立の陣頭指揮の経験を経て、2021年3月より株式会社ファミリーマートの代表取締役社長に就任。
「Convenience Wear」クリエイティブディレクター
FACETASM
落合 宏理
1977年東京都生まれ。2007年に自身のブランド「FACETASM」を立ち上げ、
2016年に第34回 毎日ファッション大賞にて大賞を受賞。
同年開催のリオ五輪閉会式では「フラッグハンドオーバーセレモニー」の衣装製作を手がけ、パリ・メンズ・ファッション・ウィークにてコレクション発表を続ける。
2021年にファミリーマートによる衣料品ブランド「コンビニエンスウェア」のクリエイティブディレクターに就任。

コンビニエンスウェア展開の背景
~成功のカギは店舗との信頼関係構築~

細見 :

これから社会人になられる皆さんがそうだったと思うんですけれども、2020年~2023年までの3年間はコロナで本当に苦労されたわけですよね。

マーケット自体も大きく変わってしまって、特にデパートなどリアルの売場が多いアパレルは、コロナ禍では人が積極的に行かない場所になってしまいました。それでもおしゃれをしたかったり、ちょっとした喜びを見いだしたいという気持ちだったりは、人間誰しもが持っているものです。

コンビニエンスウェアは実はコロナ禍の前から落合さんとファミリーマートとで企画を進めていたものです。今になって振り返ってみると、コンビニエンスウェアが受け入れられたのは、「コンビニで喜んでいただけるファッションってどういうものなのかな」という私たちの考えと、コロナ禍でもおしゃれをしたいという皆さんの思いの底流との波長が、非常にマッチしたからなんじゃないのかなと思っています。

落合氏 :

細見社長から言われた「洋服をコンビニで売る文化をつくりたい」という言葉にはすごくしびれて、自分には何ができるんだろうっていうところからのスタートでした。

プロジェクトを進めていく中で、まずはデザインに取り掛かるよりも、加盟店の皆さまや社員の皆さんにどう信頼していただくかが重要だなと感じるようになりました。やはりコンビニの仕事は、人と人との仕事なんだなと改めて思いました。

コンビニエンスウェアで一番最初にデザインしたのはファミマソックスでした。 細見さんも僕も海外に出ることが多い仕事だと思うんですけど、海外の人達から見て東京、日本を象徴するものはファミリーマートのブルーとグリーンのラインなんですね。ファミリーマートは24時間クリーンで、おいしいものを売っていて、清潔感があってと海外にもファンがたくさんいるから、そこをちゃんと皆さんに伝えたいなっていう思いでデザインしたんです。

コンビニエンスウェアから始まった"挑戦"

細見 :

コンビニでお弁当を売ると、お客さまが食べるときにスプーンやストローを使われますよね。それにより、毎日大量にプラスティック類の廃棄が出ています。これをどのように削減していくのかが、我々がSDGsを考えるにあたっての重要な切り口になっています。

落合氏 :

今はコンビニエンスウェアを通じてSDGsとは何なのかを考える「ブルーグリーンプロジェクト」というのもやらせていただいています。コンビニエンスウェアらしいデザイン性のあるカトラリーだったり、何回も利用できるように真ん中で開いて洗えるストローだったり、再利用ができてかつ、ちゃんとデザインができているというものをファミリーマートが展開できるように今動いています。「ブルーグリーンプロジェクト」という名前は、ちょうどファミリーマートの青は海、緑は森の色だという発想から付けました。

細見 :

その発想がいいよね!!ファミリーマートの青と緑を組み合わせてきれいなブルーグリーンになるっていうのが。

落合氏 :

僕は青と緑のラインを見て「あっ!地球の色だ!!」と思って、ファミリーマートのサステナビリティを象徴するカラーになっていくと考えました。すごくいいプロセスを歩んでいるので、これからも良い展開ができるんじゃないかと自分でも楽しみにしています。コンビニって実はアイデアの宝庫なんです。丁寧に見直すと、未来につながるクリエイションが見つかると思います。

ファミリーマートの未来像

細見 :

消費者の方からすると、コンビニは商品が置いてある場で、本部の人間がそれを売っていると考えられるかもしれません。でも実は我々はインフラを作っているんですね。日本全国でコンビニは60,000店ぐらいあるんですけど、こんなにコンビニがあるのって世界中で日本だけなんです。日本人の気質とコンビニエンスストアの存在がマッチしているんでしょうね。アートだけに限らず、今までに考えつかなかったものとの相性というのも恐らく良いと思うので、新しいコラボレーションが生まれていく重要な場になっていくと思いますよ。

落合氏 :

今治タオルにしても靴下にしてもメディアだと思っているので、コンビニに来たときにさっと横を通っただけでもちょっと心が動くといいなというところを意識しています。また加盟店の皆さんに喜んでいただくということもとても重要だなと考えています。

細見 :

近年はソフトウェアへの置き換えが進んでいて、最近だとチャットGPTみたいな生成AIも出現し、人間が置き換えられてしまったらどうしたらいいのかという悲観的な議論も出ています。我々もいち早く、この潮流を自分たちの中に取り込んでいかないといけないと考えていますが、切迫感があるということは、それ自体が大きなチャンスでもあるんですよね。

ファミリーマートはリテール(小売)の商売ですので、お客さまの生活に対して「あなたと、コンビに、」になるというのが大事なわけです。これまでは店舗というサービスだけを提供していればよかったわけですが、お客さまは今やもうスマートフォンを使うのが当たり前の、デジタルの生活を送られています。ですので、これからはデジタルでもお客さまとつながっていかないといけませんし、こうすることで新しい可能性も出てくると思います。こういった流れは、店舗の意味を再定義するきっかけにもなりました。

 

コンビニ再定義

細見 :

5年ほど前に「ファミペイ」というアプリを立ち上げて、そこでお客さまとデジタルでのつながりが始まりました。そこにはやっぱりコンテンツが必要なんですね。ではお店ではどのようにコンテンツを効率的に見てもらえるかと考えたら、デジタルサイネージの設置が必要になってきます。2024年3月時点で10,000店舗への設置が完了しており、1日に約1,500万人の方に見ていただく店舗メディアとなっています。これもコンビニエンスウェアと一緒で、メディア化です。店舗をデジタル化しながらメディアにしていくということを、我々はファーストランナーとして走っているんです。挑戦者、変革者、そういう立ち位置をエンジョイしていますよ。

個人的には全国16,300店舗すべてに設置したいと思っていますが、コンテンツは全部の店で流すもの、1,000店舗限定とかにで流すものなど、細分化したメディアにもなっていくと期待しています。これからものづくりも細分化していくのでしたら、PtoP(Peer to Peer)の商売のベースにもなり得るんじゃないでしょうか。
※Peer to Peer:サーバーを介さずに端末(PC、スマホなど)同士で直接データのやり取りを行う通信方式のこと。

チャレンジを通じて学生へメッセージ

落合氏 :

細見さんとも、時代を変えなきゃって本当に真剣に思って話していたじゃないですか。こういうことってチャレンジした人間にしかできないことだと思います。

細見:

新しいものにどんどんチャレンジして、時代をつくっていってほしいですね。

落合氏 :

次の時代が良くなると思いますし、その時代を見たいですよね。

細見 :

ファミリーマートはリアルが店舗でやっていますけど、デジタルの空間は果てしなく広がっていますし、リアルとデジタル両方の領域で思いっきりやってほしいですね。学生の皆さんはデジタルネイティブの先頭を走っているわけですから。

落合氏 :

デジタルの世界もそうですが、リアルの店舗は全国に約16,300店舗あって、年間55億人が利用している。これってどちらもすごく大きな数字ですよね。そこで一つアクションを起こすだけで広がりが無限にあるので、そこはチャレンジしてもらいたいです。

細見 :

新しい時代の「あなたと、コンビに、」を一緒に探しましょう。