ファミリーマート成長戦略のカギは、新しい価値観の店舗

身近にあって便利なコンビニエンスストア。昨今では、新型コロナウイルスの感染拡大によるリアル店舗のあり方、バーコード決済をはじめとするキャッシュレス化への対応、業界の垣根を超えてストアスタッフの人材確保問題など環境が変わってきており、既存の店舗フォーマットだけでは、持続的な成長が難しくなってきています。

何かを変えなければ成長を続けることはできない。そう考えた当社は、今までのやり方だけではなく、新しいコンビニのあり方や価値観をお客さまに提供し、新時代の「あなたと、コンビに、ファミリーマート」となることを決意しています。

この考え方の一環として、従来では困難だと考えられた地域、施設、場所への出店など、これまでとは異なる考え方での店舗開発を進めています。この店舗開発の目玉とも言えるのが、利用者の利便性を重視した無人決済店舗です。

無人決済店舗とは!?サービス内容や仕組み、メリットなどを徹底解説

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ファミリーマートにおける無人決済店舗の1号店「ファミマ!!サピアタワー/S(サテライト)店」が誕生したのは、20213月のこと。もしかしたらテレビや新聞、雑誌などで見て知っている方や、すでに利用されている方も多いかもしれません。

無人決済店舗の利用方法は「はいる。えらぶ。でる」。たったこれだけです。事前登録も不要で、どなたでも「はいる。えらぶ。でる。」でお買い物が済んでしまうんです。

どうしてこのようなことが可能なのかというと、天井に設置されたカメラと陳列棚の重量センサーにより、お客さまが手に取った商品を認識する方法を採用しているからなんです。レジの前に立つと購入予定の商品が端末に表示されるので、あとはお会計をするだけ。店内のカゴを使わず、持参したバッグに直接商品を入れても認識可能なのでレジの前で袋に詰める手間が省け、混雑緩和にも役立っています。

従来の店舗と比較すると店舗面積は小さく、品数も従来フォーマットの店舗と比べると少ない一方で、お客さまにとっては、忙しい朝でも行列に並ぶ必要がないのはとても大きなメリットとなっています。

現在展開している6店舗は、すべて首都圏に出店しています。ですが、店舗面積が小さくても良い、人件費を抑えられるといった点では、地方や過疎地にも出店することで、それぞれのエリアが抱えている課題の解決にもつなげられるはずです。

期待が高まる無人決済店舗、見据えるその先は

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実際、すでに多くの自治体・企業からお問合せをいただいており、無人決済店舗の出店にさまざまな期待が寄せられています。

現在コンビニ業界が抱えているさまざまな課題が、無人決済店舗のフォーマットが一般化することで解決する可能性が現実味を帯びてきているのです。

従来では出店が困難だった環境への出店は成長戦略につながりますし、無人決済店舗なら少人数の店舗従業員で運営が可能です。また複数店舗展開も行いやすくなります。

このようにお客さま加盟店、それぞれにメリットの多い無人決済店舗。コンビニが新たな価値をまとうことにより利用シーンやニーズにも変化が生まれ、皆さまの暮らしがますます便利になる世界を目指しています。

この高みに第一線で挑戦しているのが我々ファミリーマートなのです。

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とは言え、小規模だからといって簡単に出店できるわけでは当然ありません。通常店舗よりも取り扱える商品が少ないという特性上、配送効率や品揃えを常に検討していかなければなりません。新規出店を増やしながらも、各店舗や地域が抱える課題を解消していく必要が出てきます。ファミリーマートだからこそできる解消方法は何なのか考えることこそ、私たちの挑戦です。

無人決済店舗の開発現場では何が起こっている? 無人決済店舗拡大のキーマンに迫る

ここからは、実際にプロジェクトに携わり店舗開発を担ってきた「TTG推進グループ」の江川賢と津田純一に、1号店出店までの道のりや現在抱えている課題など、無人決済店舗の開発現場で起こっていることを語ってもらいます。

まさにファミリーマート発展のキーマンとも言える二人は、無人決済店舗にどのような可能性を感じているのでしょうか。

重視したのはスピード感

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——1号店「ファミマ!!サピアタワー/S店」がオープンして1年以上が経過しましたが、周囲からの反応はいかがですか?

津田:ありがたいことに様々なメディアに取り上げていただいたことで、多くの出店依頼が寄せられている状態です。202210月現在で出店している6店舗はすべて首都圏にあるのですが、ご相談は全国各地からいただいているので、これからどんどん拡大していくための計画を練っていますよ。

江川:無人決済店舗の開発はこれまでの店舗開発とまったく異なる事業計画なので、まだ発展途上でもあります。しかし店舗数が増えると得られるノウハウも多くなりますので、今後ますます柔軟に対応できるようにしていきたいと思っています。

——お二人が所属する「TTG推進グループ」の「TTG」とは何なのでしょうか。

江川:ファミリーマートが採用している無人決済システムを開発した、株式会社TOUCH TO GO(以下、TTG)のことです。無人決済システムは多くの企業が開発を進めているのですが、私たちはいかにスピーディーに実用化できるかということを最も重視しました。その観点から選定した結果、我々のビジョンに合致したのがTTGのシステムだったんです。

津田:他社も無人決済店舗に挑戦していますが、今のところ複数店舗を運営できているのはファミリーマートだけです。このスピード感も、TTGとの二人三脚だからこそ実現できたものだと思っています。

お客さまにとってのNo.1への道のりは?

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——無人決済店舗をはじめ、これまでと異なるかたちでの店舗開発は、ファミリーマートがお客さまにとってのNo.1になるための大きな布石です。どのような道筋でNo.1を目指していこうとお考えですか。

江川:そう言われるとプレッシャーがのしかかってきますよね(笑)。もちろんNo.1を目指すのも大切なミッションですが、私たちは何よりお客さま加盟店の役に立つことを重視しています。その結果としてファミリーマートを選んでいただき、No.1になれたらと考えています。

津田:先ほども申し上げたように、全国からお問い合わせをたくさんいただいていますし、無人決済店舗を複数店舗運営できているのもファミリーマートだけです。

今はまだ首都圏に6店舗だけなので、無人決済店舗の利便性を訴求しきれていない部分もあります。もっと規模が大きくなれば、お客さまのニーズに合わせて、通常の店舗と無人決済店舗を使い分けていただけるようになるんじゃないかと期待しています。

「こんなところにファミリーマート!」を推進

——新しい価値観での店舗開発には、どのような苦労があるのでしょうか。

津田:社内でも社外でも調整する要素が多いことですね。ファミリーマートは40年以上の歴史の中で、店舗開発のフォーマットができていたのですが、今の部署ではいかにフォーマットから外れた出店方法でも利益をあげられるのかを考えて実践していかないといけません。既存の方法が通用しない条件下でも店舗を運営しないといけませんから、とにかく大変です。

江川:利用者の方には「こんなところにもファミリーマートがあって嬉しい!」と便利に思っていただけるとありがたいですが、それって同時に「普通こんなところにコンビニは出店しない」という定石を覆していることでもあるんですよね。この可能性の模索はチャレンジングでやりがいがあります。

「使い方がわからない」お客さまをゼロにしたい

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——津田さんがおっしゃるように、事業を拡大していくためにはまだ利用したことがない方やご存じない方へのアプローチが大切ですよね。

江川:先日たまたま「ファミマ!!サピアタワー/S店」に行ったとき、50代ぐらいの男性が店内にいらっしゃったんですけど、しばらく店内を歩きまわってから「使い方がわからないからいいや」って出ていってしまったんです。それはショックでしたね。私たちはシステムを知っているから便利だと感じていただけで、初めてのお客さまにとっては未知のもの。アプローチが足りていなかったんだと気付かされました。店内アナウンスや掲示など、使い方を周知する方法は模索していかないといけないですね。将来的に「使い方がわからない」というお客さまをゼロにしたいです。

津田:私も、まだまだお客さまへ告知する必要があると感じています。事業者への周知はできていると思いますが、実際にご利用いただくのはお客さまですので、どういうシーンで役に立つのか、どうやって商品を購入するのかを知ってもらうための情報発信に力を入れていきたいですね。

——他にはどのような課題があるのでしょうか。

江川:無人店舗のため取り扱えない商材がある中で、例えば「どうにかファミチキを品揃えできないか……」というようなことを社内で言われることがあります。店舗開発をできるだけスムーズに進めるために、取り扱えない商材があっても無人決済店舗はどれほどメリットが多いのかという社内への説得材料を、他の部署と協力しながら増やしている段階です。

オーナーとの関係性は変わらない

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——無人決済店舗は人件費を抑えられる一方、カメラやディスプレイの常時稼働など、従来の店舗とは異なるコストがかかってくると思うのですがいかがでしょうか。

江川:それはそうですね。システムの設置にはそれなりのコストがかかります。ですが人を雇うということは、お給料だけではなく、教育コストも必要になります。そう考えると、長期的には無人決済店舗の方が効率が良いんです。

津田:もちろん無人決済店舗にもオーナーをはじめスタッフはいます。有人店舗を母店として、無人決済店舗を出張店舗として営業することで、これまで以上に利益を上げている加盟店もいらっしゃいます。店舗開発の方法は変わっても、店舗を通じて加盟店に利益を還元したいという思いは変わりません。

これからのコンビニ業界はどのように変わる?

——コンビニもこれからますます変革が求められそうです。

津田:私の入社時、選考で「10年後のファミリーマートはどうなっていると思いますか」という課題を出されました。当時どのように回答したのかは忘れてしまったのですが(笑)、今のような将来はまったく想像できなかったですね。

江川:私も、今後どうなるか誰かに教えてもらいたいぐらいです(笑)。でも確実に言えるのは、今のままの業態だと業界全体が先細りしてしまうということです。またコロナ禍でオフィスへの出社数が減ってしまったことで、新たな出店計画も、これまで出店していた店舗をどうするかも、見直しが必要になっています。だからこそ、新しい価値観での店舗開発が必要になってくるんです。

挑戦を続けるファミリーマートが求める人物とは?

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——学生の皆さんへのメッセージをお願いします。

江川:ファミリーマートはいつでも挑戦者の気持ちを持っているので、意欲のある方にはとても向いていると思います。私たちの部署にはまだ若手社員がいないので、新しい価値観を持っている方にはぜひ挑戦してもらいたいですね。

津田:自分の思いをどうやって周囲に伝えて、どう実現するのかは、社会人にとって必要なスキルだと思います。ファミリーマートは、やってみたいことはどんどんやれという社風です。であれば、どういう企画書を書くのか、誰を巻き込むのか、どうやって周りを説得するのか、という経験をどんどん積んでいけます。ですので、実現したいことがある方にとってはとても働きやすい職場だと思います。

お客さまのニーズにお応えすべく挑戦し続けます!

いかがでしょうか?私たちの挑戦の本気度が少しでも伝わればと思います。

世の中の価値観やニーズの変化に伴い、変革期を迎えている現代。当然コンビニ業界も変容が求められています。このような時代を乗り切るには、変化を恐れないチャレンジ精神が必要だと考えます。「挑戦」は、まさにファミリーマートの企業風土。私たちは変革期を勝機と捉え、どんな時代でも 「あなたと、コンビに、ファミリーマート」としてお客さまと新しい価値でコンビを築き、寄り添ってまいります。