ファミリーマートの「個店のマーケット分析」とは
みなさんは「クリスピーチキン」を食べたことはありますか? ファミリーマートが40周年記念商品として発売し、一時は品薄になるほどの大ヒットを記録した商品なのです!
「クリスピーチキン」の商品化にあたっては、全社が一丸となって取り組んだのですが、大ヒットの立役者となった個店のマーケット分析からの観点をご紹介します。
ファミリーマートでは、店舗と地域に密着した課題解決を行い、加盟店の利益向上を目指し、その地域に存在し続ける店舗を加盟者とともに作り上げる「個店のマーケット分析」を大切にしています。
店舗によってお客さまのニーズや抱える課題が異なるため、解決策はその時々によって異なります。そこで個店に対して最適な課題解決を模索し、提案と実行をサポートしているのが、ファミリーマートのスーパーバイザーです。店舗、お客さま、地域にとって何が大切かを瞬時に把握し、行動することで課題の改善を図っています。
2021年の「クリスピーチキン」発売当時、スーパーバイザーだった杉本直哉さんに、大ヒット商品販売の経験から学んだことを教えてもらいました。
スーパーバイザーは縁の下の力持ち
――「スーパーバイザー(SV)」とはどういう仕事なのでしょうか。営業職というイメージがありますが…。
一言で言うと、加盟店を支える縁の下の力持ち的な存在ですね。どんな商品を店舗に置くかは加盟店に決定権がありますが、スーパーバイザーはファミリーマート全体で集計しているデータや、どのようなところに消費者ニーズがあるかなどといった俯瞰的な知識でアドバイスをします。たとえば新商品など加盟店がまだ知らない情報も持ち合わせているので、的確な情報をお伝えして、適切な店舗づくりに活かしています。
スーパーバイザーの究極の目標は、店舗にどれだけ集客できるかということ。もっと言えば、近隣の競合店からお客さまを獲得してくることですね。そのためには品揃えはもちろん、スタッフの接客態度や雰囲気も変えていかなくてはいけませんし、そもそも地域と密に関わりを持つ店舗じゃないとお客さまは来てくれません。これらの要素を変えるのがスーパーバイザーの腕の見せどころなので、自分の力量を試す良い機会とも言えます。
――普段の業務ではどのようなことを心がけていたのでしょうか。
PDCAを素早く回すことですね。加盟店のオーナーの中には、どういう商品をどのように展開すれば売れるのかを探究される方も多いんです。ただ、もちろん失敗もあります。私の場合、そういう場合もオーナーの心に寄り添って、もっと売上を上げる方法を素早く考えるようにしていました。たとえば、「競合他社ではこういう施策をやっているからやってみませんか」や「最近インターネットでこういう流行があるから乗ってみませんか」など提案していましたね。
クリスピーチキンが売れすぎて一時品薄に! その時スーパーバイザーは?
――加盟店と本部が一丸になって、企画・販売に取り組んだからこそ、想定以上の反響を呼んだんですね!
そもそもクリスピーチキンは、ファミリーマート40周年企画の目玉商品として全社を挙げて力を入れていた商品でした。私たちも加盟店の売上がプラスになるように、事前にサンプルを配布したり、オリジナルのPOPを提供したりと、クリスピーチキンが売れるように現場で工夫を続けていました。
サンプルを食べてもらった結果は概ね好評で、特に女性スタッフからの支持が高かったですね。ファミチキなどこれまでのホットスナックは男性客から人気が高かったので、この結果を受けて「女性客も取り込みたいから」と仕入れ数を増やしてくれた加盟店オーナーもいらっしゃいましたよ。
発売日当日は私たちスーパーバイザーも店舗スタッフと一緒に店頭に立って売り込み、当初は「うちの店では10個ぐらいかな」と仕入れに消極的だったオーナーも、30個、40個と売れていくうちに、どんどんモチベーションが上がっていましたね。あの時の一体感は忘れられません。
結果として2日間で200万食が売れた歴史的ヒット商品になったんです! ただ、想定を上回る反響を呼び、発売開始3日後から一時販売を休止せざるを得ないほどでした。当時は、そのことで加盟店のオーナーからも、お客さまからも販売再開を求める様々なお声を頂きましたね。私の仕事はPDCAを素早くまわすことですので、状況改善に向けて迅速に行動しました。まずは、加盟店に今回の状況を真摯に説明し関連部署に対しては、現場の状況を伝え、安定供給できるように改善してほしいという要望を出しました。
この時は工場の人員の手配や販売数予測を再度検討することで再発売の目処を早い段階で立てられたので、加盟店のオーナーにしっかりと説明し、再び目標達成に向けて一緒に進むことができました。
発売前から当日、一時販売停止、再販売までと加盟店オーナーとのコミュニケーションの機会が多かったので、これがきっかけでオーナーとの距離感が縮まったというスーパーバイザーもいたぐらいですよ。
お客さまの期待を上回るために挑戦を続ける
――スーパーバイザーは加盟店と本部をつなぐ大事な架け橋なんですね。ですが、いつもうまくいくとは限らないですよね? 提案って難しそうな印象です。
これはファミリーマートの企業風土でもあるのですが、挑戦したいという気持ちを尊重してくれるんです。成功はもちろん嬉しいですが、仮にうまくいかないことがあったとしても、それは言い換えれば挑戦したという証。どんどん挑戦できるのが、ファミリーマートならではだと思います。
――杉本さんは今では採用の部署にいらっしゃいます。これから就職する学生に伝えたい想いを教えてください。
私が採用の部署に異動したのは、コンビニ業界の未来を考えた時に、スーパーバイザーの経験を活かしてマーケットを分析し、PDCAを素早く回し、新しいことにもどんどん挑戦できる人財を採用したいという想いからでした。学生さんの中には、ファミリーマートでどんな仕事ができるのかわからず、不安を感じている方もきっと多いですよね。採用活動を通じて学生たちの強み、弱みを見極め、彼らが思い描いているイメージと実際の現場とのギャップを埋めていくのが、私の仕事だと思っています。
マーケットを分析する力は、どんな業種にとっても大切なものです。スーパーバイザーの仕事はマーケットの中で起きていることをいかに分析し、どのように行動するのか自分の中で落とし込む、という地道な作業の連続です。挑戦を何度も繰り返しながらも、分析した結果を言語化して、お客さまや加盟店のためになるようにつなげていくことが目標です。この想いは、学生さんたちにしっかり提供していきたいと考えています。
杉本直哉
2015年4月入社
店舗社員、店長を2年、
スーパーバイザーを5年経験後、
2022年から人財採用グループに所属